観光マップ・案内表示で押さえておきたい翻訳・表記ルール
ーローマ字表記(ヘボン式・訓令式)の違いー

観光マップや案内板、パンフレットなどを制作する際、「ローマ字表記は正しいかどうか?」「英語の表記ルールは間違いないか?」と迷った経験はないでしょうか。

一見すると些細な違いに見えるローマ字表記ですが、判断を誤ると次のようなトラブルにつながることがあります。

  • 外国人観光客に正しく伝わらない
  • Google Mapsなどのデジタル地図と表記が一致しない
  • 表記揺れによる修正・刷り直しの発生

観光マップや案内表示では、原則として「ヘボン式ローマ字」を基準にし、駅名標識・道路標識・公式Web・地図サービスなど既存表記との整合性を優先することが、混乱防止に有効です。
本記事では、ローマ字表記の代表的な方式である「ヘボン式」と「訓令式」の違いと、観光マップ制作時に注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

ヘボン式・訓令式とは? ローマ字表記の基本

ローマ字表記とは、日本語の音(読み)をアルファベットで表す方法です。用途は大きく次の2つに分けられます。

  • 読むためのローマ字:外国語話者が日本語を発音しやすいように示す(例:駅名、地名、観光案内)
  • 書くためのローマ字:日本語の音の規則を整理しやすくする(例:学校教育、日本語学習、行政文書の一部)

たとえば「東京」を Tokyo と書くのは、単に英語へ翻訳しているのではなく、「とうきょう」という読み方の手がかりをアルファベットで示していると考えると分かりやすいでしょう。

このように、ローマ字は目的によって重視する点が異なるため、同じ音でも表し方が変わる場合があります。この考え方の違いから生まれたのが「ヘボン式」と「訓令式」で、実際に使われる場面にも差があります。

ヘボン式ローマ字とは

ヘボン式は、19世紀に来日したアメリカ人宣教師ジェームス・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn)氏によって考案された表記法です。英語話者をはじめとした外国人にとって発音しやすいことを重視している点が特徴です。

  • 外国人が見て読める・発音しやすい
  • 観光・交通・地名表記で広く使用される
  • パスポート表記にも採用されている

訓令式ローマ字とは

訓令式は、日本語の音韻体系を規則的に表すことを目的として、日本政府が定めた表記法です。五十音との対応関係が明確であるため、日本語教育や言語構造の説明などの分野において使用されています。

  • 日本語学習者向けに体系的に整理しやすい
  • 学校教育で使用されることが多い
  • 日本語としての規則性を重視する

ローマ字表記の主な方式|ヘボン式と訓令式の基本的な違い

ヘボン式 訓令式
考え方 日本語の発音を外国人にも理解しやすい形で表記する 日本語の五十音構造をローマ字に置き換える
表記例 ち:chi / し:shi / つ:tsu / ふ:fu / しゃ:sha ち:ti / し:si / つ:tu / ふ:hu / しゃ:sya
主な使用場面 観光案内、駅名、地名、パスポート、企業名など 学校教育、日本語学習、言語体系の説明など

例えば「し」は、ヘボン式ではshi、訓令式ではsiとなります。
英語話者が「si」を見ると「サイ」「スィ」と読まれる可能性がありますが、「shi」であれば「シ」に近い音を直感的に想像しやすくなります。

観光マップ・案内表示ではどちらを使うべきか?

駅名の英語表記 大阪

観光マップ・案内板・外国人向け資料では、原則としてヘボン式ローマ字が推奨されます。

その理由①:外国人観光客に伝わりやすい

観光マップや案内表示の主な利用者は、日本語を母語としない外国人観光客です。ヘボン式は発音に近い表記のため、地名・駅名・観光施設名を見た瞬間に「どう読めばよいか」を理解しやすいという大きなメリットがあります。

その理由②:国・自治体・交通機関との整合性

多くの自治体や交通機関、国の観光関連資料では、ヘボン式ローマ字が事実上の標準として使われています。「駅名標識」「空港案内」などと表記を揃えることで、「観光マップだけ表記が違う」という違和感や混乱を防ぐことができます。

その理由③:デジタル地図・検索との相性

近年は、紙の観光マップとデジタル地図を併用する観光客が増えています。ヘボン式表記は、Google検索・Google Maps・海外ナビアプリとの相性が良く、検索・ナビゲーション時の迷いを減らす効果があります。

大阪の地名で見る、観光案内で定着しているローマ字表記

日本語表記 観光案内で一般的な表記
新大阪 Shin-Osaka
心斎橋 Shinsaibashi
道頓堀 Dotonbori
天王寺 Tennoji
日本橋(大阪) Nipponbashi

日本を訪れる外国人観光客は増加傾向にあり、案内標識や観光パンフレット、施設のWebサイト等におけるローマ字表記の統一性伝わりやすさは、移動やコミュニケーションを支える重要な要素となっています。

よくあるローマ字表記のトラブル

観光マップ制作では、ローマ字表記に関して次のようなトラブルが発生します。

  • 既存看板と新しいマップで表記が異なる
  • 翻訳会社や制作会社が途中で変わり、方式が統一されない
  • 日本語版・英語版・多言語版でローマ字がバラバラになっている

これらの多くは、制作初期に表記ルールを明確化していないことが原因となります。

観光マップ制作で押さえるべきローマ字表記のポイント

1.表記ルールを制作初期に決める

企画段階で「ローマ字はヘボン式で統一する」等、運用方針を明文化することが重要です。

  • 長音(おう/おお):例)「〜おう」「〜おお」をどう表記するか(媒体ごとに揺れやすい)
  • 撥音「ん」:例)n の扱い(後続の音によって誤読が起きない表記にする)
  • 促音「っ」:例)子音を重ねる表記の統一(地名・施設名で混在しやすい)
  • 区切り(ハイフン/スペース):例)Shin-Osaka のように結合・分割ルールを統一する
  • 大文字・小文字:例)見出し・地図ラベル・本文で表記基準をそろえる
  • 既存表記との整合:駅名標識・道路標識・公式Web・地図サービスの表記を優先し、独自表記を避ける
2.制作途中で表記を変更しない

途中変更は修正漏れ・表記揺れを招きやすいため、原則として避けます。

3.既存の公共物・案内物と整合性を取る

駅名・道路標識・観光案内板・公式Web等の既存表記を必ず確認し、媒体間の不一致を防ぎます。

ローマ字表記は、単なる「翻訳作業」ではなく、観光導線全体を設計するための重要な要素です。読めるか迷わないか検索できるかを総合的に考えることで、初めて「使いやすい観光マップ」につながります。

MAP Promotionでできること

MAP Promotionでは、観光マップ制作において印刷・デザインに加え、次の観点を含めたご提案が可能です。

  • ローマ字表記ルールの整理(方式・表記ゆれの統一)
  • 多言語展開を前提とした情報設計
  • 既存案内物・デジタル地図との整合性確認
  • 配布導線を考慮したマップ設計

豆知識:長音を示す「マクロン」

ローマ字で長音(のばす音)を表すとき、母音の上に付ける横棒の記号をマクロン(macron)と言います。
例:Tōkyō(東京)、Ōsaka(大阪)

ただ、観光や交通の案内、地図サービスでは、読みやすさや検索のしやすさを優先して、Tokyo / Osakaのようにマクロンなしで書かれることがほとんどです。

多言語翻訳でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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